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診療報酬改定が経営に与える影響とその対策

更新日:2024.12.27

 今回は、医療コンサルティング(経営支援、事務長代行)業務の中でもご相談の多いテーマである「診療報酬改定が経営に与える影響とその対策」について掲載します。

 診療報酬改定は、2年に1度実施され、医療機関の経営に多大な影響を与える重要な制度変更の一つです。診療報酬は医療サービスの評価基準であり、改定内容に応じて収益構造や診療の在り方が大きく変化します。特に近年は、効率的な医療提供や地域包括ケアの推進といった政策方針が診療報酬改定の中心となっており、各医療機関はその対応を迫られています。以下、診療報酬改定が経営に与える主な影響と具体的な対策について解説します。

診療報酬改定が医療機関に与える影響

1.収益構造の変化

 診療報酬改定では、特定の診療行為の評価が引き上げられる一方で、他の診療行為の報酬が減額されることがあります。例えば、在宅医療やリハビリテーション医療の評価が高まる一方で、病院の入院基本料が減収となるケースも見られます。

(具体例)

 2022年度の診療報酬改定では、かかりつけ医機能を持つ外来診療の報酬が増額され、患者との継続的な関係が評価される一方で、短期的な検査や診療に依存するモデルでは減収が見られたりしました。

2.診療内容の再構築が必要に

①診療報酬改定は、政策目標に沿った医療提供を促進するため、医療機関の診療方針に影響を及ぼす傾向にあります。例えば、病床機能の見直しや外来診療の在り方を変更しなければならないケースも出てきています。

(具体例)

慢性期病床から回復期病床への転換を進める医療機関が増加。

②在宅診療や訪問看護へシフトをするケースも増えています。

3.人員配置や運営コストへの影響

新たな要件や評価基準の導入に伴い、人員配置や設備投資が必要になる場合があります。例えば、特定の加算を取得するために専任のスタッフを増員しなければならない場合、初期費用や運用コストが増加します。

診療報酬改定に対する具体的な対策

1.改定内容を早期に把握し対応を計画する

 診療報酬改定の方向性は事前に議論されるため、改定の動向を早期にキャッチアップし、対応策を練ることが重要です。特に厚生労働省の資料や診療報酬改定説明会に参加することで、具体的な内容を把握できます。

2.収益構造を多角化する

 診療報酬改定による影響を緩和するため、収益源を多角化することが効果的です。たとえば、以下のような取り組みが挙げられます。

①在宅医療の強化:地域密着型医療機関として患者の自宅での医療提供を拡充する。

②健診・予防医療:診療報酬以外の収益源として、健康診断や予防医療プログラムを提供。

3.スタッフ教育と組織体制の見直し

 改定内容に応じた体制の整備が必要となる場合もあります。例えば、新たな加算取得の要件を満たすためのスタッフ教育や配置転換が求められます。

①スタッフ教育:新しい報酬制度に対応できるスキルを持ったスタッフを育成。

②柔軟な組織運営:業務分担の見直しや、必要に応じた人員追加を検討。

デジタル技術の活用

近年の診療報酬改定では、オンライン診療やデジタル化が評価される傾向にあります。これを活用することで収益を増やすだけでなく、運営効率も向上します。

①オンライン診療の導入で、新規患者層を開拓。

②電子カルテや診療支援ツールの活用で効率を向上。

地域連携を強化する

 近年の診療報酬改定では、地域包括ケアや多職種連携が重視されています。他の医療機関や介護施設、地域行政との連携を強化することで、新たな報酬加算に対応できます。

診療報酬改定をチャンスに変えるには

 診療報酬改定は、多くの医療機関にとって課題であると同時に、新たな可能性を生む機会でもあります。政策の方向性に合わせた診療内容の再構築や、長期的な視点での投資を行うことで、持続可能な経営モデルを構築することが可能です。改定の影響を最小限に抑えるだけでなく、逆に改定のメリットを最大限活用できる体制を整えることで、地域で必要とされる医療機関として成長を続けることが可能になります。

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